このサイトでは多くの場合「」(H2O)と有機金属(例TMA)を使った酸化膜のプロセスの説明をしてきました。ただ水でなくとも酸素の膜が作れればよいわけで、つまり酸素の膜では以下の材料が利用されます。

① 水(H2O)
② オゾン(O3
③ プラズマ化した酸素
④ 
過酸化水素(H2O2
(実際の酸化膜では酸素=O2が極めて安定のため酸素そのものがプリカーサーとしては利用されていません。)

オゾン発生機に酸素のガス(O2)を供給してオゾンを生成します。水を使った場合よりも低温(<120℃以下)でなかなか良質な膜ができます。
オゾン発生機のメーカー
① MKS: 業界No. 1シェア
② 東芝三菱電気システム: 酸素供給に窒素を含まなくとも高濃度オゾンの発生が可能になる技術を持つ。
③ 住友精密 : 大規模オゾン発生設備から製造ライン用まで対応可能。
④ InUSA

プラズマも同様で、オゾンより更に低温化が可能(<100℃)で、フィルムを使ったロール2ロールでの使用が視野に入っている分野もある。
プラズマというのはWikipedia で「固体液体気体につづく第4の状態」とか、他にも難しい説明がされています。ALDメーカーでよく使われるプラズマ発生技術はCVDなどでも使われるICPと呼ばれるもので、Inductively Coupled Plasma = 誘電結合プラズマというものです。これはどういうことかと言うと、酸素ガスなどが流れる配管の周りを、高周波がかかったコイルで巻いてあります。コイルに電気が流れると内側に磁場が発生しますが、ここでは高周波(波の状態)が流れているために、内部の磁場は頻繁に変動します。通常13.56MHz と一秒間に13,560,000回も磁場が著しく変動するため、通過する気体の酸素がぶんぶん振り動かされるのです。そして酸素はついには酸素イオンと電子に分離してしまいます(本当はもっと複雑ですが)。その酸素イオンは電子が離れていったために通常の酸素よりも不安定で活性化しています。そして基板表面で酸素の膜となります。特に低温で成膜したい場合、プラズマの利用が考えられます。

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活性化した酸素プラズマは基板にダメージを与えるので距離を取る必要がありますが、一方で酸素の状態に戻りやすくもあり、プラズマ生成部と基板の距離の取り方には注意が必要です。通説では低真空領域1Paの圧力でわずか1cmしかプラズマは飛ばないと言われており、ICPプラズマの安定供給には注意が必要と思われます。