Spacial ALD (空間的ALD) – コスト低減化へ

前回からの続きで、低コスト化への解としてSpacial ALD と呼ばれる新たな潮流の技術について解説します。(Picosun社が半導体ベースの装置を改良して、ロール2ロール型の装置も改良しておりますが、それよりもっと低コストな技術が開発されています。)

方式としては、2つに分類されると思います。
1)モジュール連結型(図は装置側面を表します)

Roll2Roll module

フィルムが右から左に向けて流れてゆく、その上にALDで使う材料の成膜モジュールを配置して成膜を順次行って行くものです。例としてTMAと水=H2Oをここでは使用しました。(水よりは酸素プラズマなどのほうが良い。)ピンクがTMAのモジュール、赤色が水のモジュールです。膜となる材料投入の間に窒素のモジュール(青色)を挟むことにより、TMAとH2Oは外部に漏れることなく遮断されて、そのまま横上に排気されます。
これであれば、ALDの弱点である低速成長が、モジュールを増やせば増やすだけ高速になり改善されます。仮に100mの生産ラインであっても、モジュールを増やすことで対応可能です。モジュール1つの金額が不明ですが、高価なALDバルブを使用することもなく大気中での成膜が考えられ、大幅なコスト低減が可能です。
代表的な開発メーカー:Veeco Instruments

2)空間仕切り型
まず縦型のロール2ロール仕組みをご覧ください。
Roll2Roll system
このロールの流れを3つの区画に仕切り、それぞれに異なるガス種で満たします。
Roll2Roll with ALD
その3つの区画には3種類のガスで充満して、両端の空間域にきたフィルムにそれぞれアルミと酸素が成膜され、その中間にある窒素ガスの雰囲気中ではパージが行なわれます。窒素ガスの領域はTMA/H2Oの領域より高い圧力となっておりTMAやH2Oが中に入ってきません。
仕切りのフィルムが通る隙間の精度が大切ですが、その他(高額な)部材をたいして使用することなく、成膜が可能です。
代表的な開発会社:Lotus Applied Technology

ただし、もっと重要な問題はALDで作成したピンホールフリーAl2O3膜が水蒸気・水分にたいして長期のバリア性が高くない問題があり、今後の開発が期待されます。

備考
上記のハードウエアの図は、国際学会「ALD2015」で行なわれてVeeco 社とLotus 社の発表資料を基に作成しました。