<ALDで成膜できる膜一覧表>
ALDを使用してできる膜材は以下をご参照下さいませ。(アイントホーフェン工科大学Erwin Kessels先生達が周期表でどの材料が開発されてきたかをリスト化しております。参考論文つき。)
 AtomicLimits.com
また国際学会「ALD2016「ALD/ALE2017」ALD/ALD2018」「ALD/ALE2019」プログラムも参考になるかもしません。ご一読くださいませ。

<半導体用途>
① High-K 材(厚み:<1nmt)
High k
② パッシベーション(絶縁膜)
参考:長野県工業技術総合センター研報, No. 11, P15-18 (2016) (要メルマガ登録。こちらのAl2O3データは弊社デモ機を使用して頂きました。)
③ バリアレイヤー
④ シードレイヤー TSVでCu埋め込みの前にALDで膜付けます。
⑤ DRAMキャパシターの埋め込み

<遷移金属ダイカルコゲナイド(”遷移金属カルコゲナイド”とも呼ぶ)>
次世代トランジスターの材料候補である遷移金属ダイカルコゲナイド(層状カルコゲナイドとも)(transition metal dichalcogenide  “TMDC”)。MoS2、WS2、WSe2などで、例えばMo(モリブデン)が遷移金属で、S(硫黄)がカルコゲナイト(2つで、ダイカルコゲナイト)のこと。2つの材料を別々に積み上げるためにALDを使用し、例えばMo層形成後にS2を形成し数nm厚の2次元のシート状に形成することが可能です。ALD2015学会で示されたプレカーサー材料を下にいくつか列挙します。(SEMATECH, IMEC, Yonsei University, CEA-LETI, Argonne N’tl Lab)
MoS2(プレカーサー材料:MoCl5 + H2S3 or Mo(CO)6 + (CH3)2S2) or MoF6 + H2S )
WS2(プレカーサー材料: WF6+H2S)
参考① 埼玉大学上野啓司先生のサイト
参考② 日経エレクトロニクス 2016年3月号記事(要登録)

<グラフェン>
一般にCVDで作成するグラフェンだが、プラズマ使用のALDでグラフェンを作成する研究も進んでいます。
例 Xi’an Jiaotong University Dr. Wei Ren
成膜温度:400℃
プレカーサー:ベンゼンとH2プラズマ


<太陽電池>
① シリコンベース次世代技術 – PERC (Passivated Emitter Rear Contact) セル
太陽電池の裏面側にAl2O3をALD成膜する(SiNxとアニール処理も)ことにより変換効率の向上が図れます。産総研の資料
② ペロブスカイト太陽電池
このペロブスカイトを塗布する前の下地膜としてTiO2をALD成膜して、効率が飛躍的に向上されたとされている (KRICTやNIMS)。(TiO2は正孔のブロッキングの機能あり、ピンホールフリーな膜質が求められます。)

<有機デバイス用途>
有機デバイスのバリアレイヤー層に使用されます。原子層堆積での緻密な膜はピンホールがなく薄くても良好な膜質。代表的に膜にAl2O3があるが、それだけでは十分に水分子の侵食を防ぎきれないため、他の様々な材料と組み合わせたマルチレイヤーが検証されています。例 Al2O3/ZrO2

ALDから派生して、有機材料を分子レベルで1層だけ成膜することも可能で、それをMolecular Layer Deposition (MLD)と呼びます(日本語にすると「分子層堆積」)。成膜されたものとしては、ポリミド、ポリアミドが過去にあったらしい。最近までよく研究された材料に、アルミニウムなどの金属とエチレングリコールが混合積層されたAlucone(アルコン)と呼ばれる膜もマルチバリアレイヤーのサンドイッチ構造の中で使われる。Aluconeそのもののバリア性は良くなく、Al2O3のクラックを侵蝕してきた水分がAluconeを迂回し下のAl2O3レイヤの別のクラックまでの距離を稼ぐと言われています。

<透明導電膜>
ITO代替材料。SnO2など。

<パウダー(粉末)へのコーティング>
ALDでナノメートル単位のパウダーに膜を付けて、保護したり表面の性質を変更したりすることが可能。量子ドットが代表的。

<燃料電池用の触媒>
Pt/Pdコアシェルの作成にALDを使用したり、下地のAl2O3, TiO2, CeO2などにもALDを使用して研究が進んでいます。
Fuel cell (1)
一例として、Pt(白金)をALD成膜する場合、核(島状)の形成がなかなか進まないことを利用して、サイズが<1nm や3nm平均の微細なPtナノパーティクルをカーボンブラックなどの表面に形成する。従来のPtのサイズが2〜5nm であったものが小さくなることで、触媒反応が加速、大幅改善される(しかもPtの使用量を抑制できる)。加えて、その上にZrO2をコーティングすることで安定性を向上させ長寿命化させることが可能です。(Western Ontario 大学のDr. Andy Sun 先生の発表資料をベースに記載しています。)Pd, Ru, Inなども候補かと思われます。

<リチウム電池用途>
リチウム電池では、電極活物質粉体(粒径:<20μm)の表面をALDで数nmコーティングすることで、酸素放出や膨張・体積変化を抑制させることが可能になる。主な利点は①安全性の向上、②充放電のサイクル数の向上、③繰り返し充放電での減衰の抑制である。

<ウルトラキャパシター(super capacitor)用途>
カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンを使った次世代キャパシターの開発が世界で進んでいるが、それらをALDでコーティングすることが可能。CNTにはRuO2, IrO2などを成膜して、サイクル数を向上させて安定性を改善しています。

<超電導物質>
原子レベルで現れる物質の特異な性質から、ALDを使った超電導物質の探究も続けられています。NbNなど。

<包装パッケージ>
真空パックにピンホールフリーな良質なコーティングが必要となり、ALDの使用が今後進むと思われます。

<円筒内部コーティング>
ALDはガスの流れを利用して成膜するため、隙間があればあらゆるところに侵入していく性質を利用して、細い管の内側へのコーティングが可能です。