プリカーサーについて
付けたい膜は通常2種類のプリカーサー(前駆体)と呼ぶ材料を使って交互に積み上げます。代表例のAl2O3 で説明すると、TMA (トリメチルアルミニウム)ガスとH2O (水蒸気)を交互にプロセス室へ投入し1レイヤーづつ製膜します。このTMAとH2Oは何もせずとも蒸気としてALDバルブが開くとすぐに配管に流れて、チャンバーへ向かいます。基板に到着すると、TMAのAl (アルミニウム)が、H2OのO(酸素)が、基板上にある化学的な手と繋がります。
プリカーサーによっては、固体であったり、重くてなかなか容器から出てこない材料もあるので、追加の技術を使って蒸気化してチャンバーへ送り込みやすくします。その技術とは:
① 容器の加熱
② バブラー(キャリアガス(例N2)の気体をプレカーサーに配管を沈めてぶくぶくと泡立つようにする供給機構)
③ 気化装置(ベーパライザー、液体を気化させる)
④ 超音波振動
⑤ インジェクション(噴射)
また、酸化膜の場合H2O の替わりにオゾン(O3、オゾン発生装置で生成)やプラズマ酸素(リモートプラズマ発生装置で生成)を投入することがあります。加熱された水分子の酸素よりも活性化したのがオゾンやプラズマで、膜の質を改善し、低温でのプロセスに使えます。
レシピについて(参考)
< Al2O3 >
プリカーサー1:TMA
プリカーサー2:H2O
レシピ(例)
1. 配管加熱: 120℃
2. 基板加熱: 350℃
3. N2キャリアガス流量: xxx sccm
4. プロセス安定化のための時間: 1200 sec
5. TMA パルス:0.015 sec
6. パージ:5sec
7. H2Oパルス:0.015 sec
8. パージ:5 sec
9. サイクル数設定 (5〜8の繰り返し): n数
10. 装置:C/U社
< HfO2 >
プリカーサー1:TDMAHf ( Hf[N(CH3)(C2H5)] )
プリカーサー2:H2O
レシピ(例)
1. 配管加熱: 120℃
2. 基板加熱: 200℃
3. N2キャリアガス流量: 20 sccm
4. プロセス安定化のための時間: 900 sec
5. TDMAHf パルス:0.05 sec
6. パージ:10sec
7. H2Oパルス:0.25 sec
8. パージ:15 sec
9. サイクル数設定 (5〜8の繰り返し): n数
10. N2キャリアガス流量: 5 sccm
11. 装置: S社
(ご自身の装置に適用する場合、その責任において試してください。膜が付く保証はしておりません。)
代表的なプリカーサーメーカー
1. ADEKA (アデカ)ALD2015国際学会で、マーケットシェア15%で、業界No.1とのこと。
2. Air Liquid (エアーリキード)
3. 気相成長
4. 高純度化学研究所
5. シグマアルドリッチ (2015年8月 ドイツメルクへの買収完了)
6. ジャパン・アドバンスト・ケミカルズ
7. 大同エアプロダクツ・エレクトロニクス
8. 田中貴金属
9. トリケミカル研究所 半導体用途で活躍中。
10. 日本エア・リキード
11. BOC Science