パウダーコーティング その3

Fluidization方式とドラム回転式がALDでのパウダー粒子へのコーティングとしては研究されてきましたが、別な方法も探索されています。2015年の国際学会「ALD2015」セッション「Manufacturing」で米国 ALD NanoSolutions社が発表したビデオで、デモ機の映像を見せていたものです。勝手に命名するならば、「Spatial (空間的)ベルトコンベヤー方式」とでも呼べるかと思います。

Powder coater belt conveyor 1

Spatial ALDで説明したように、間仕切りでTMA, 窒素、酸素プラズマ、窒素と部屋を区切ることにより廉価に成膜しようというものです。特筆すべきは、それをパウダーコーティングで行っていることです。パウダー粒子はベルトコンベヤーに載ってプロセス室に送られ、TMAや酸素プラズマなどの成膜する部屋では、下からの振動を受けてパウダー粒子が飛び上がります。その状態にプリカーサーのガスが均一に回り込むことで、コーティングがなされるものです。各成膜プロセス間は窒素の部屋となっており、パージの役割を担います。またそれぞれの部屋の間は排気ラインとなり、余分なガスは放出されます。
あとは、この部屋を希望する膜厚まで、それらの部屋を増やしてゆけば、生産ラインの構築が可能です。仮に1部屋30cmで構築したとして、1サイクル4部屋で120cm、5nmtの膜厚を0.1nm/cycleつけたなら50サイクル必要で、60mの生産ラインとなります(排気のスペースを考慮しない)。

Fluidization(流動化)方式やドラム回転方式に比べて、容器をいちいち取り外すことなく生産ができるので、プロセスが安定して上手く成膜できるならばとても良い解決策になると考えられます。

更に縦型Spatial ALDの量産機として米国 Pneumaticoat Technologies社より高さ7mのパイロット機での実績と量産機の開発状況が、特にLiイオン電池で使用されるパウダー粒子へのAl2O3成膜、2016年4月に公表されています。驚くべきは、2016年のコーティング費用$10/kgから$1/kgへを来年にかけて目標にしていることです。CEO Mr. Paul LichtyのHannover Messe 発表内容